赤く、紅く、朱い。
ただ広いだけが取り柄だった荒野が、血と死にまみれている。
古い血と新しい肉と古い肉と新しい血が交わる。
ここはきっと、地獄だった。
そんな地獄に、女が一人。
うずたかく積まれた肉片の頂に腰を掛けてぼんやり空を眺めているのは、赤髪赤目の少女。
空は、青い。
地と、天。それらはまるで白と黒のように相反する色彩を放っている。
少女は空だけを見る。赤い世界に座して、紅い髪をなびかせ、朱い瞳で空を視る。
ぼんやりと、ぼんやりと考える。
ここが地獄で、空は天国。
……あれ、じゃあ生きているものは、どこに行けばいいの?
名刀に負けぬ腕を持った強き侍は突いた。
大きな鎚を持った大きな男は、仲間を庇って。
正確無比な弓を繰る怜悧な女は薙いだ。
長い槍を手足のように扱う寡黙な武人は潰した。
荒野は赤く、空は青く。
少女は赤く、空は青く。
ゆっくりと、少女が立ち上がる。まるで生まれて初めて立つように、その細い足にあらん限りの力を籠めて。
そして荒野を見渡して、一つ息を吐いた。それは、長く、永い、ため息だった。
よし。
そう漏らし、少女は一歩前へ進み出ようとし、ぺたん――と尻餅をついた。
呆気にとられたのは数瞬だけだった。すぐに少女は「あぁ」と納得し、静かに瞳を閉じた。
赤い荒野はただ赤く。赤い少女はただ赤く。
青い空はただ青く。青い空はただ青く。
by kyo-orz
| 2007-06-21 04:39
| Kyoの30分創作