何も特別なことの無い平凡な一日だった。
普通に起きて、普通にご飯を食べて、普通に学校に行って、普通に授業をして、普通に友達と会話して、普通に下校して、普通にご飯を食べて、普通にお風呂に入って、普通に布団に入った。
友達は多いほうだと思うし、家族とだって普通に会話をしたし、そこそこ楽しい一日だとすら思えるほどだ。
なのに、なのに……どうしてだろう。
電気を消して布団に入った瞬間、何故かふいに―――
―――私は独りなんだって気付いてしまった。
そんなこと無いと頭の表面で思っていても、奥底ではそれを事実として既に受け入れてしまっている。
だからこれは理解ではなく「悟り」なんだと思う。私はこの十七年の生で、なんと早熟なことかそこまで辿り着いてしまったのだ。
ああ、こんなときに限って思い出したくない記憶が甦ってくる。
三年前、学校の帰り道、夕焼けに染まる河原をあいつと二人で歩いていたときのこと。
――人間がさ、泣きながら生まれてくるのってさ…………淋しいからなんだよな。
私なんかよりも遥かに早熟だったあいつの心底の言葉。
今ならその言葉の意味が分かる気がする。淋しいから――この世界は孤独だから。だから泣く。哀しくて、切なくて、悔しくて。
だってどうすることも出来ない。障害は気が遠くなるほど多く、困難だ。
人が人と分かり合える日なんて、人が孤独じゃなくなる日なんて、地球滅亡まで待っても来やしない。
はぁ、と溜め息を一つ。闇にかざした右手を見つめる。
それは仄かに熱を帯びている。気のせいだと思うし、本当は本当に気のせいなのだろう。
でもそこにはあいつの温もりが宿っている気がして――あの別れの日の握手がまだ残っている気がして。
だから私は泣いた。
声を押し殺して、溢れ出る涙をただ枕だけに押し付けて泣いた。
あの時あいつはなんて言っただろうか。いつもの、ほんの少し哀しそうなあの表情を浮かべて、なんて言って行ってしまったのだろうか。
右手を胸に抱いてそれだけを考えた。そうしなければ私は壊れてしまうと思った。
あの日、二人のとっておきの場所で、暮れる夕陽とそれを受け入れる地平線を望みながら、二人は向かい合うことはせずに、ただ紅く淡い光に身を預けて、涙は流さずに、その“時”を待っていた。
夕焼けに染まるのはなにも空だけでは無い。川も、そして私たちも染まっていた。真っ赤に、嘘みたいに真っ赤に。
言葉は無いものだと思っていた。人は孤独と知っているあいつだから、何も言わずに行ってしまうと思っていた。言葉無く別れ、そのまま二度と会うことは無いのだと漠然と思っていた。
隣からさっぱりとした声が聞こえてきたとき、私はそれを何かの間違いだとすら思ったほどだ。
あいつは……確かあいつが言った最後の言葉は――――
――――生きようね。強く。
涙を堪えるのも忘れて横を見たとき、あいつはもう歩き出していた。
その足取りは軽快で、およそ孤独に絶望している奴とは思えなかった。
しっかりと地を踏みしめて道を行くあいつの後ろ姿は、きっと今までで一番力強く、また、淋しかった。
……その言葉こそがあいつが出した結論。あいつが選んだ道。あいつの信じた答え。
なら私は――――なら私も――――――ッ!
もう気のせいではなく熱くなった右手を掻き抱いて思う。
遠いあの日に思いを馳せて――去っていくあいつの後ろ姿に語りかけるように、
――――生きよう。強く。
淋しさは消えないけれど、哀しさは薄れないけれど、でも大丈夫。迷わずこの道を歩いていける。
淋しければ泣けば良い。哀しければ泣けば良い。そうして生まれた私たちだから。
大丈夫。
生きていける。
人は、決して弱くはないのだから。
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唐突に淋しくなったり孤独を感じたりすることってありますよね?
今回のお話はそんな孤独シンドロームちっくなお話でしたよ。ああん、なんだかとってもセンチメンタリティー溢るるお話でしたわね。
これを読むことにより何かを感じ、何かを想っていただければ幸いです。
人は弱くありません。
でもね、
やっぱ適度な睡眠は不可欠だね人間だもの。
―――寝よう。今すぐ。
よし、今回も良い具合に読後感ぶち壊しだ。(迸る笑顔で
ま、このお話、結構良いできじゃなかろうかなんて書き上げたばかりの今の段階では思ってるので、もしかしたらいつの日か「楽園」に登録したりしてるかもしれないことも無きにしも非ず。
もし登録したら日ッセイでばっちりがっちり報告するので投票よろしくね!!(面白かったら、とか無し!?
それでは今日はこんなところでお別れですよまた明日ですよーーーー!
人は弱く無い! でも俺は眠い!! ぐっばぁぁぁぁぁぁああぁあああい!!!
by kyo-orz
| 2005-06-22 04:13
| Kyoの30分創作