そこは、暗かった。
光が無い故に暗いのではない。
闇がそこに集うから暗いのだ。
光すら恐れる暗闇。ここは、暗黒世界。
黒い世界が揺らぐ。
そこには二人の人間の姿があった。
――いや、姿形の捉えることが出来ない存在は、果たして人と言えるだろうか。
それは悪魔であるかもしれないし、鬼であるかもしれない。
もしくは、何も“無い”のかもしれない。
だが、そこには確かに二つの存在があった。
それらは互いを視覚せぬまま対峙していた。
「……あ、」
長い沈黙を経て、片方が言葉を紡ぐ。
でたらめに縫われ閉じられた口から漏れ出るような、歪な音。
「あ、ああんたの依頼の品は、ここここれかい?」
闇が戦慄くように震えた。
震えの中心には一振りの刀。
絶対的な支配力を持つ暗黒ですら滲ませる、圧倒的な存在感の無さ。
例えるならそれは雪の結晶。
その存在を認めたときにはもう消えている。そんな儚さ。
「ご注文どどおりの出来だろろろ? ば、獏の涙を集めるのに苦労した。へ、へへへへ」
夢の担い手、獏。
その一滴はこの世のあらゆる事象を夢へと変化させるという。
幻の世界を創造し、現実世界を有耶無耶にする。
刀は、その力を受け継いでいた。
「め、銘は『夢幻』。へへ、へ、そのまんまだとか言わないでくれよ。名は大切だ。世界にて、てて定義してやらなきゃならねぇ。“力”を持つ刀ならなおさらだ」
カシュンッ、という心地良い音。刀が鞘に仕舞われた音。
その音で世界は現実に戻る。夢幻が終わる。
黒が蔓延る暗闇の世界がやってくる。
「ほ、ほ、本来は刀との相性を確かめるんだが、あ、ああんたならも、問題ないだろ」
刀を差し出す。
「自己が無いあああんたなら、“夢幻”の影響は受けない。ききき、消えちまうことはあるかもしれないけどな。へへへ、へへへ」
夢が渡る。幻のような存在に渡る。
其が斬るはなにか。
其が断つはなにか。
夢と幻を携え、限りない無に立ち向かうか。
力は得た。刀は得た。
――“夢幻”を、得た。
暗黒に残った一つの存在。
出来の悪い人形のように話すその存在は、己しか存在しない空間で呟いた。
どこか、悲しげな口調で。
「ひ、人の夢と書いて儚い、か。あああんたは、夢に取り込まれるなよよ」
そうして、暗闇から一切の存在が消えた。
それはあたかも泡沫の夢のように―――
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このお話は、現在鋭意妄想中の新作に登場する人物のお話ですよ。
刀あり! 魔法あり! 忍者あり! 銃器あり! 格闘あり!
そんな、「ごった煮ふぁんたじ~(?)」になっております。とりあえず人物と世界設定を決めて、あとは好き勝手にそいつらを動かしていこう、というコンセプトを元に妄想された適当物語なのですよッ! それはコンセプトとは言わないって言う人嫌いです。
折を見て書き始めようとか企んでます。己の快楽のためだけに書こうとしてます。自己満足って言葉、とても良い言葉だと思いますっ。
ぃよっし、それじゃ今日はここいらで終了なのですよ。おつかれさまでした。また明日なのです!
by kyo-orz
| 2004-12-24 03:51
| Kyoの30分創作